故郷を奪われた男が、故郷そのものを吹き飛ばした。マコ・ラトリッジはオーストラリアのアウトバックの住民だった。オムニックのために土地を譲渡され、追い出され、怒りのままにオムニウム融合炉を爆破した。結果としてアウトバックは汚染され、故郷は不毛の地と化した。

その瓦礫の上をバイクで走るうちに、マコの人間性は少しずつ失われ、最後の残滓が消えたとき、残っていたのは冷酷な殺し屋ロードホッグだけだった。では、奪われた側の人間は、どこで壊す側へと変わったのか。

公式ヒーロー・ストーリーは、その転換を「故郷の喪失」の物語として描いている。

土地を奪われたアウトバックの住民

マコ・ラトリッジは、オムニウム建設のために土地を奪われたオーストラリアのアウトバックの住民の1人だった。

オムニック・クライシスによって大きな痛手を負ったオーストラリア政府は、オムニックと長期の平和協定を結ぼうと、オムニウム施設と周辺地域をオムニックに譲渡してしまう。アウトバックの住民やプレッパー、ソーラー・ファーマーなど、多くの人々が追い出されることになった。

その中に、マコの姿もあった。

ここで私が注目したいのは、公式ストーリーがマコを最初から無法者として描いていないことだ。出発点は、土地を奪われた住民である。政府の決定は、戦争の痛手を受けた国が平和を買うための譲歩だったのかもしれない。だが譲渡された側にとっては、故郷を失うことと同義だった。

マコの怒りは、最初から破壊衝動として生まれたのではないと私は読んでいる。奪われた土地を取り戻したいという、ごく素朴な要求から始まっている。

オーストラリア解放戦線と、融合炉の爆破

故郷を追われた怒りから、マコたちは暴動を起こす。彼らはオーストラリア解放戦線を組織し、奪われた土地を取り戻すため、オムニウム施設とオムニックたちを襲った。争いが激化する中、解放戦線はオムニウム融合炉を爆破。

施設は消し飛び、アウトバック一帯は汚染され、金属片や瓦礫が数キロ四方に飛び散った。

この一節は、ロードホッグの物語の核心だと私は思う。解放戦線の目的は「奪われた土地を取り戻す」ことだった。だが融合炉の爆破は、取り戻すべき土地そのものを汚染し、不毛の地へ変えてしまった。取り戻すための戦いが、取り戻す対象を壊してしまったのだ。

公式ストーリーは「故郷が不毛の地と化したことで、マコもまた変わってしまった」とだけ記す。その変化の内実は語られない。だが私はここに、男が壊し屋へ変わる分岐点があると読んでいる。守るべきものが失われた後、残るのは怒りの形だけになる。

怒りの対象が消えれば、怒りそのものが生き方になる。

ガスマスクとバイク、そしてジャンカータウン

環境に適応するため、ガスマスクを被ったマコは、壊れかけのバイクにまたがった。崩れ落ちたアウトバックの道を走るうちに、マコの人間性は少しずつ失われ、その最後の残滓が消えたとき、マコはもはや存在せず、冷酷な殺し屋ロードホッグだけが残っていた。

ロードホッグはジャンカータウンの片隅の酒場に居座り、町の女王であるジャンカー・クイーンにとっては頭痛の種となっていた。ロードホッグはお構いなしだ。酒が飲めるなら、誰がどう思おうと知ったことではない。

ところが、ひょんなことからジャンクラットと出会い、伝説のお宝を半々で分けることを条件に、タッグを組むこととなった。女王と組むよりはマシそうだ。

ガスマスクは、汚染された土地で生き延びるための道具だったはずだ。だが公式ストーリーの描き方では、それはやがて顔そのものになっていく。マスクの下の男の名前が消え、「マスクの殺し屋」という通り名だけが残る。

私はここに、ロードホッグという存在の怖さがあると読んでいる。彼は仮面を被ったのではない。仮面が、彼の顔になったのだ。ジャンカータウンでの居座りも同じ温度だ。誰の命令も受けず、誰の評価も気にしない。壊れた土地で生き延びた者が、壊れた街の片隅で酒を飲む。

それだけの生活が、彼には十分だった。

ジャンクラットとのタッグと、世界を股にかけた犯罪

ジャンカータウンから追放された2人は、しばらくオーストラリア中をさまよった。ある時、2人はハイド・グローバルのCEOと対面し、オムニックのテロリストに占拠された倉庫の奪還を依頼される。ところが、2人は保険金詐欺の片棒を担がされていたのだ。

依頼はインチキだったが、これを機に世界を股にかけた犯罪の連鎖が幕を開ける。

ジャンクラットとの関係について、公式ストーリーは興味深い一文を添えている。「なぜジャンクラットがその地位を占めているか、その理由は誰も知らない」。

ロードホッグと肩を並べられるのは、爆弾マニアの若き犯罪者ジャンクラットだけだというのだ。私はこの「理由は誰も知らない」という書き方に、2人の関係の本質があると読んでいる。利害の一致だけなら、説明はつくはずだ。

お宝を半々で分ける条件で組んだタッグが、世界を股にかける犯罪の連鎖へ広がっていく。だが利害を超えた何かが、2人を結びつけ続けている。公式ストーリーはそれを明かさない。明かさないからこそ、2人の並びは伝説めいて見える。

ロードホッグがジャンカータウンに戻ると、そこに居合わせたジャンクラットは、2人を追放したジャンカー・クイーンに復讐する計画を大声で話しはじめる。目の前で聞いていた門番によって、計画はあっさり阻止された。

2人に残されたのは金貨の山と、役に立たない仮装と、まもなく点火する爆弾だけだ。ジャンカー・クイーンとの確執は、ここでも笑い話のような形で裏切られる。復讐の計画は、門番の前で大声で語られてしまう。

恐ろしい殺し屋と爆弾マニアのタッグは、どこか間抜けでもある。その間抜けさが、2人の物語を単なる悪党譚にしていないと私は思う。

タロン侵攻と、釜山への道

ある日のこと、ロードホッグはヴェンデッタの遣いとしてやって来たマウガとジャンカータウンで邂逅する。マウガの目的はジャンカーとの提携。ヴェンデッタが展開する世界征服計画を盤石にすべく、タロンで計画中の釜山襲撃作戦で手を組みたいとのことだった。

思えば、ジャンカーが保有するクライシス時代の戦艦には反重力スラスターが足りない。もしそれをタロンに提供させれば——そう考えたロードホッグはタロンとの協力を支持。クイーンとヴェンデッタの協力関係締結を後押しした。

その後、戦艦のレストアが完了すると、ロードホッグは相棒のジャンクラット、そしてレッキング・ボールやクイーンとともに釜山に侵攻。街を盛大に荒らし、市民をパニックに巻き込むことで、ヴェンデッタによる試作EMP爆弾の奪取と彼女の現地からの離脱を支援した。

ここで私が注目したいのは、ロードホッグがタロンとの協力を「支持」し、後押ししたという立場だ。彼自身が計画の主導者ではない。戦艦のスラスター不足に気づき、提携の筋道を立てたのはロードホッグだが、動機は世界征服への共感ではなさそうだ。

ジャンカーの戦艦を動かし、釜山を荒らす。その騒ぎの中で、彼は相棒と共にいつもの場所にいる。釜山侵攻の記述は、ロードホッグが何かの大義に目覚めた話ではないと私は読んでいる。むしろ逆だ。故郷を奪われた男は、もう何の側にも立たない。

立たないからこそ、どの陣営の騒ぎにも加担できる。壊す側に回ったのではない。壊すこと自体が、彼の居場所になったのだ。

釜山へ向かうロードホッグ

公式に確認できること

マコ・ラトリッジはオムニウム建設のために土地を奪われたアウトバックの住民で、オーストラリア解放戦線を組織してオムニウム融合炉を爆破したが、その結果アウトバック一帯は汚染された。ガスマスクを被ってバイクに乗るうちに人間性を失い、ロードホッグとなった。ジャンクラットとお宝を半々で分ける条件でタッグを組み、ジャンカータウンから追放された後、ハイド・グローバルの依頼をきっかけに世界を股にかけた犯罪へ広がった。後にマウガを介したヴェンデッタとの提携を後押しし、ジャンクラット、レッキング・ボール、クイーンとともに釜山に侵攻した。

現時点では未確定

ロードホッグがジャンクラットとだけ肩を並べる理由、融合炉の爆破から人間性の喪失に至るまでの具体的な経緯、そして釜山侵攻の後、彼がどこへ向かったのかは、公式ストーリーの中で詳しく明かされていない。

結論:奪われた男は、どこで壊す側へ変わったのか

冒頭の問いに戻る。奪われた側の人間は、どこで壊す側へ変わったのか。公式ストーリーが示す転換は、1つの決断の瞬間ではない。土地を奪われ、解放戦線を組織し、融合炉を爆破し、故郷を汚染し、ガスマスクを被り、バイクで瓦礫の道を走る。

その積み重ねの果てに、マコの名前が消えた。私はそこに、答えの一端があると読んでいる。ロードホッグは、ある日突然生まれた悪党ではない。取り戻すための戦いが、取り戻す対象を壊してしまったとき、残された怒りがそのまま生き方になった男だ。

故郷を失った者は、故郷を壊した者にもなり得る。ロードホッグの物語は、その残酷な連続を、笑い話のような間抜けさと共に描いている。だからこそ、恐ろしい。それでも、彼の隣にはジャンクラットがいる。理由は誰も知らない。だがその並びだけは、壊れた土地の上でも続いている。