シエラ・ターナー・ウッズは、母を探すためにヘリックス・セキュリティへ入社し、史上最年少でウォッチポイント:グランド・メサの警備主任にまで上り詰めた女性である。だが彼女が追っているのは、母の行方そのものなのか、それとも母が背負わされた過去の答えなのか。

公式ヒーロー・ストーリーは、その問いを解かずに置いたまま、彼女をオーバーウォッチとの共闘へ導く。

逃亡の日々と、母ケンドラの教え

シエラの幼少期は、母との逃亡の日々だった。母のケンドラ・ウッズは逃亡の理由を決して教えず、自身の過去についても多くを語らなかった。それでも追手が迫るたび、シエラはケンドラから教わった対処法を実践し、母娘2人で各地を転々とした。

逃亡先の学校では、抜きん出た才能と度重なる転校ゆえにクラスから孤立した。それでも「自分の成し遂げたことに誇りを持つべき」というケンドラの教えを胸に、シエラは着実に自信を身につけていった。

私はここに、後の彼女の「決してブレることのないポジティブ思考」の出発点があると読んでいる。根拠のない楽観ではなく、逃げながらも自分の足で立ち続けた経験に裏打ちされた強さだ。

13歳の失踪と、父との生活

シエラがまもなく13歳の誕生日を迎えようとした時、ケンドラは何の前触れもなく姿を消した。

独りになったシエラは事前に教わっていた緊急プロトコルに従い、ケンドラの持ち物の中にあった乗車券でバスに乗り、バージニア州で自然保護官を務める父、ジェームズ・ターナーの元へ身を寄せた。

父との生活は初対面同然で苦難の連続だったが、2人の絆は次第に深まっていった。シエラはジェームズから、ケンドラとの馴れ初めやアパラチア山脈に囲まれた平穏な共同生活、そしてわずか1年後に訪れたケンドラの失踪について聞いた。

ジェームズはケンドラの過去と行方に関する情報をほとんど持っていなかったが、米国政府が家宅捜索に訪れ、「ノートン計画」なる言葉を持ち出して自分を問い詰めてきたと語った。

母が消えた理由を、父は知らなかった。だが「ノートン計画」という言葉だけが、シエラの手元に残った。

ヘリックス入社と、山岳分隊のキャプテン

父の協力のもと、シエラは「ノートン計画」の情報がヘリックス・セキュリティの保管庫で厳重に管理されていることを突き止めた。自身の非凡な身体能力と知性を武器にヘリックスへ入社した彼女は、まもなく高危険度作戦チーム、いわゆる山岳分隊のキャプテンの座を射止める。

プラズマ兵器と遠隔移動支援ドローン「R.O.T.Hユニット」(愛称「ドロシー」)を駆使し、シエラは峡谷での救助活動や洞窟網に潜む犯罪組織の壊滅作戦を指揮した。

グランド・キャニオンやナイアガラの滝、世界最高峰の山々で分隊の任務を成功へ導いた実績が、彼女をヘリックス入社からわずか数年でグランド・メサ警備主任の座へ押し上げた。

ここで注意したいのは、彼女の出世が母探しの手段だったのか、それとも手段を超えた彼女自身の実績だったのか、公式ストーリーが両方を同時に描いていることだ。

警備主任の座は「ノートン計画」へのアクセス権を意味したが、同時に彼女がチームメイトを率いるキャプテンとして本物だった証でもある。公式プロフィールが彼女を「チームメイト想いなヘリックスのキャプテン」と紹介するのは、偶然ではないと私は読んでいる。

ノートン計画と、母の正体「ソルジャー00」

公式に確認できること

シエラはグランド・メサの機密情報へのアクセス権を得て、母の本名がケンドラ・バンクスであり、かつて存在した強化兵計画の最初の被験者「ソルジャー00」として超人的な能力を与えられたことを突き止めた。しかしケンドラが実験後まもなく計画から離脱・逃亡したのか、それ以上の詳細は記録に残されていない。

シエラの類まれなる身体能力の理由は判明した。だが肝心な母の所在については、いまだ謎に包まれたままだ。

この一節が、シエラの物語の核心だと私は考えている。彼女が手に入れたのは母の行方ではなく、母の正体だった。逃亡の日々を共にした母は、強化兵計画最初の被験者だった。母が理由を語らなかったのは、娘を守るためだったのか、それとも自分自身の過去から逃れるためだったのか。

公式ストーリーはそこに踏み込まない。だからこそ、シエラの問いは「母はどこにいるのか」から「母は何から逃げていたのか」へと重さを移していく。

タロン侵攻と、オーバーウォッチとの共闘

デッドロック・ギャングとタロンによるグランド・メサ襲撃の際、シエラは外部からの支援のもと敵を撃退した。その外部の支援こそ、復活を果たしたばかりのオーバーウォッチだった。

Reign of Talon最終章の記事で整理した世界攻勢の一局面である。

オーバーウォッチといえば、強化兵計画最大の成功例であるジャック・モリソンとガブリエル・レイエスによって率いられていた組織だ。

ソルジャー76の記事で触れたモリソンが体現する強化兵の系譜は、シエラの母の系譜と地続きである。そこの下でなら、グランド・メサでわからなかった母の行方が判明するのではないか。

そう考えたシエラは、オーバーウォッチとの共闘に胸を弾ませるのだった。

グランド・メサの警備主任として立つシエラ

現時点では未確定

ケンドラ・バンクスの現在の所在、彼女が強化兵計画から離脱・逃亡した経緯の詳細、そしてシエラがオーバーウォッチに正式に加わるのかは、公式に明らかになっていない。

結論:彼女が追っているのは、母の行方か、母の答えか

冒頭の問いに戻る。シエラが追っているのは、母の行方そのものだけではないと私は読んでいる。グランド・メサで彼女が得たのは、母の居場所ではなく母の正体だった。それでも彼女の歩みは止まらなかった。

逃亡の日々で母から教わった「自分の成し遂げたことに誇りを持つべき」という言葉が、彼女をキャプテンにし、警備主任にし、そして今、オーバーウォッチとの共闘へ向かわせている。

母を探す旅は、同時に彼女自身が何者かを知る旅でもある。強化兵計画最初の被験者の娘として生まれた彼女が、母の過去の答えにたどり着いた時、その先で母と再会できるのか。それとも、母の答えそのものが彼女の進む道になるのか。公式ストーリーはまだ、その先を語っていない。