アッシュは無法者である。列車を襲い、武器を奪い、法へ従わない。それなのに、彼女が南西部のギャングたちへ求めたのは無秩序ではなく、約束、縄張り、制裁を含む明確なルールだった。

矛盾して見えるが、アッシュにとって法と秩序は同じものではない。法は外から押しつけられる。自分たちの秩序は、欲しいものを奪い続けるために自分で決める。

なぜ彼女は、自由を求めて家を飛び出した後に、再び規則を作る側へ回ったのか。そこには、裕福だが自分を見なかった両親と、何があってもそばにいたB.O.B.という二つの原体験がある。

欲しい物は与えられても、選ばれる経験がなかった

エリザベス・カレドニア・アッシュは、武器製造会社アルバレスト・アームズを経営する裕福な家庭で育った。両親は娘が成功するために必要な物を用意したが、仕事に忙しく、本人と過ごす時間はほとんどなかった。

彼女の世話を担ったのは、執事オムニックのB.O.B.である。物質的には満たされていた一方、自分を優先してくれる存在は両親ではなかった。

ここで重要なのは、アッシュが単に貧しさから犯罪へ向かった人物ではないことだ。むしろ、生まれた時から用意されていた「成功」の中に、自分で選んだものがなかった。

キャスディとの犯罪で、初めて結果を自分のものにした

近隣のならず者だったコール・キャスディとの出会いが、アッシュの進路を変える。二人で始めた場当たり的な犯罪には、獲物を出し抜く判断、危険から逃げ切る技術、成功と失敗を自分で引き受ける感覚があった。

公式プロフィールは、彼女がその爽快感とスリルによって天職に目覚めたと説明している。両親から与えられた財産とは違い、盗んだ獲物は、自分の計画と行動で手に入れた結果だった。

自分で選んだ秩序を率いるアッシュとB.O.B.

のちに両親から勘当され、相続権を失ったアッシュは、B.O.B.とキャスディらとともに財産を奪い返していく。正当な所有権を取り戻すというより、誰が自分の未来を決めるのかを力ずくで奪い返す行為だった。

デッドロックは、家の代わりに自分で作った組織だった

アッシュは仲間と「デッドロック・レベルズ」を結成し、大きな盗みを成功させて名を上げる。だが、勢力を広げるほど、法執行機関だけでなく他の犯罪組織との衝突も増えた。

無法者が互いを潰し続ければ、自由になるどころか、毎回ほかの組織の動きに振り回される。そこでアッシュは主要ギャングのボスを集め、共闘ではなく不干渉の秩序を提案した。

公式に確認できること

アッシュが掲げた原則は、約束を守ること、法には与しないこと、互いの縄張りを尊重すること、裏切りには厳しい制裁を下すことだった。

彼女は両親の仕事から学んだ交渉や事業の考え方を、犯罪組織の運営へ転用した。家を否定しながら、家で見てきた技術は捨てていない。受け継いだ手段を、自分が支配できる組織へ移したのである。

アッシュのルールは、正義ではなく継続のためにある

アッシュが秩序を作ったからといって、行いが正当化されるわけではない。彼女のルールは被害者を守るためではなく、ギャング同士の消耗を減らし、より大胆な強盗を続けるために機能した。

私は、ここにアッシュの一貫性があると考えている。彼女が嫌うのは規則そのものではなく、自分の意思と関係なく人生を決める規則だ。自分が設計し、結果を管理できるルールなら、むしろ積極的に使う。

B.O.B.との関係も、その秩序の例外ではない。彼は幼少期からアッシュのそばにいて、現在も命令へ応じる。しかし、B.O.B.が彼女をどう捉えているのか、二人の関係を主従だけで説明できるのかは、公式情報だけでは断定できない。

キャスディとの再会は、支配できない過去を突きつけた

キャスディがオーバーウォッチへ移ってから何年も後、デッドロックは高速列車の貨物を狙う。積まれていたのは、長く停止していた高性能ロボットのエコーだった。

だが、強奪を阻止したのはキャスディである。彼はデッドロックを制圧し、エコーを解放し、アッシュのバイクまで奪って去った。短編アニメーション「REUNION」で描かれたのは、アッシュが築いた縄張りへ、かつての仲間が別の目的を持って戻る場面だった。

アッシュは南西部のギャングを交渉で抑えられても、キャスディの選択までは支配できない。彼が組織を離れたことも、エコーを連れ出したことも、彼女の原則では処理できない裏切りとして残っている。

現時点では未確定

アッシュがキャスディへの復讐をどこまで優先しているのか、エコーの価値を当時どこまで把握していたのか、今後デッドロックがどの勢力と関わるのかは明らかになっていない。

結論:アッシュは自由のために、法の外へ自分の秩序を作った

アッシュが無法者へルールを課したのは、善良な統治者になりたかったからではない。誰かの期待、家名、法律、他のギャングの抗争に、自分の行動を決めさせないためだった。

両親からは事業を動かす技術を学び、B.O.B.からはそばに居続ける関係を知り、キャスディとの犯罪からは自分で結果を奪う感覚を得た。デッドロックは、それらを彼女自身の条件で組み直した組織である。

だから彼女は、自由を「何のルールもない状態」とは考えない。自分が選んだルールの中で、欲しいものを手に入れ続けられる状態だと考えている。

アッシュの危うさは、その秩序が自分と仲間のためにしか働かない点にある。だが、その狭く強固な秩序こそが、彼女を一時のならず者ではなく、南西部を動かすギャングのリーダーにした。