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ブラックウォッチとは何だったのか?ヴェネツィア事件からオーバーウォッチ崩壊まで
秘密部隊ブラックウォッチが必要とされた理由、ヴェネツィアでレイエスが下した決断、部隊の露見と活動停止、オーバーウォッチ崩壊への影響を整理。

オーバーウォッチは、オムニック・クライシスを終わらせた国際平和維持組織として知られていた。
その一方で、表の部隊には任せられない潜入、破壊工作、暗殺に近い任務を担う秘密部隊「ブラックウォッチ」を内部に抱えていた。
ブラックウォッチを率いたのは、オーバーウォッチ初代ストライク・コマンダーだったガブリエル・レイエスである。
所属していたのは、元犯罪者のキャスディ、シマダ一族への復讐心を抱えていたゲンジ、科学界から排除されたモイラなど、正規部隊へそのまま置きにくい能力と過去を持つ者たちだった。
彼らの存在が世界へ露見する転機となったのが、タロン幹部アントニオ・バルタロッティを追ったヴェネツィア事件である。
この記事では、ブラックウォッチがなぜ必要とされ、ヴェネツィアで何を起こし、その後のオーバーウォッチ崩壊へどのようにつながったのかを整理する。

英雄組織が秘密部隊を必要とした理由
オムニック・クライシス後、オーバーウォッチの任務は世界規模へ広がった。
戦争を終わらせるだけでなく、テロ組織、犯罪ネットワーク、国境を越える武器取引など、正規の軍事行動だけでは対処しにくい脅威とも向き合う必要があった。
しかし、国際組織が他国へ無断で潜入し、容疑者を拘束し、施設を破壊すれば、外交問題になる。証拠が揃うまで動けない間にも、敵側は計画を進められる。
その矛盾を引き受けたのがブラックウォッチだった。
公的な承認を取りにくい任務を秘密裏に実行し、表のオーバーウォッチが守っている秩序を、裏側から維持する。組織にとって便利な存在である一方、監視や責任の所在が曖昧になりやすい仕組みでもあった。
ガブリエル・レイエスが率いたもう一つのオーバーウォッチ
ガブリエル・レイエスは、もともと初代オーバーウォッチを率いたストライク・コマンダーだった。
オムニック・クライシス終結後、表の司令官にはジャック・モリソンが選ばれ、レイエスはブラックウォッチの指揮官となる。
公式情報だけでは、この人事が決まった詳しい過程や、当時のレイエスがどこまで不満を抱いていたのかは明らかでない。ただ、彼が次に与えられた役割は、称賛を受ける英雄ではなく、組織が表立って認めにくい仕事を引き受ける指揮官だった。
ブラックウォッチはレイエス個人が勝手に作った部隊ではない。オーバーウォッチの内部組織として活動し、その成果を本体が利用していた。
後に問題が発覚したとき、上層部がどこまで把握していたのかが曖昧になったことも、この構造そのものが抱えていた危うさを示している。
正規部隊には収まりにくかった三人
ヴェネツィア作戦へ参加したのは、レイエス、キャスディ、ゲンジ、モイラの四人だった。
キャスディはデッドロック・ギャングの一員として逮捕され、収監かブラックウォッチへの参加かを選ばされた。最初は組織へ冷めた見方をしていたが、過去の罪を別の形で償う道を見つけていく。
ゲンジは兄との決闘で瀕死となったあと、オーバーウォッチに救われ、サイボーグの体を与えられた。シマダ一族の犯罪帝国を壊すという目的のため、ブラックウォッチの兵器として自分を使う道を選んだ。
モイラは、倫理上の問題を指摘されて科学界で立場を失っていた。ブラックウォッチは研究を続ける場所を与え、彼女は武器や技術を開発し、レイエス本人にも実験を行った。
三人には高い能力があったが、それぞれ犯罪歴、復讐心、倫理を軽視する研究姿勢を抱えていた。ブラックウォッチは彼らへ再出発の機会を与えると同時に、危うい部分を成果へ変える組織でもあった。
ローマ襲撃から始まった非公式の報復
ヴェネツィア事件の前、タロンはローマにあるオーバーウォッチ施設を爆破し、多数のエージェントを死亡させた。
タロンの関与が疑われても、オーバーウォッチは公的な立場からすぐに報復できなかった。そこでレイエスはブラックウォッチを率い、タロン幹部アントニオ・バルタロッティを追う。
標的のアントニオは、表向きには影響力のある実業家だったが、裏では武器取引に関わるタロンの有力者だった。
作戦の目的は、彼を生きたまま確保し、ローマ襲撃とタロンについて情報を得ることだった。しかし、アントニオは自分を拘束しても状況は変わらず、すぐに自由になるとレイエスを挑発する。
レイエスは、その場でアントニオを撃ち殺した。

一発の銃弾で作戦の性質が変わった
アントニオを殺した瞬間、作戦は秘密裏の拘束から、タロン幹部の殺害へ変わった。
さらに、現場ではタロンの部隊が一斉に動き始める。静かに対象を連れ出す計画は崩れ、ブラックウォッチはヴェネツィア市内で大規模な戦闘を行いながら脱出することになった。
この判断について、レイエスが最初から殺害するつもりだったのか、挑発を受けて衝動的に撃ったのかは公式情報だけでは断定できない。
ただし、アントニオの言葉が一つの問題を突いていたことは確かだ。秘密部隊が容疑者を捕らえても、政治や権力によって解放されるのであれば、危険を冒した任務は何を変えられるのか。
レイエスは制度を信じて対象を引き渡すのではなく、自分の判断で結果を確定させた。その選択は即座に敵を一人減らしたが、オーバーウォッチが法や監督を越えて殺害を行う組織だと見られる材料にもなった。
ヴェネツィア事件でブラックウォッチが公になった
作戦後の調査によって、ブラックウォッチの存在と活動は公の問題となった。
ゲンジの公式ストーリーでは、ヴェネツィア事件がブラックウォッチの公的な露見につながり、部隊は活動停止になったと説明されている。
秘密にされていたモイラの所属も、この事件後の調査で明らかになった。オーバーウォッチの高官たちの多くは、彼女との関係を知らなかったと主張した。
しかし、モイラはブラックウォッチで研究を続け、レイエスへ直接実験を行っていた。単なる現場の協力者ではない。もし上層部が本当に知らなかったのであれば、秘密部隊への監督が機能していなかったことになる。
知っていたのであれば、問題が表面化したあとに責任を切り離そうとしたことになる。
どちらだったのかは確定していないが、どちらの可能性でも組織への信頼は損なわれる。
ゲンジにとってのヴェネツィア事件
ヴェネツィアで戦っていたころのゲンジは、サイボーグになった自分の体を受け入れられず、シマダ一族への怒りを任務へ向けていた。
ブラックウォッチは、彼に生きる目的と復讐を果たす手段を与えた。しかし同時に、自分を一人の人間ではなく、敵を倒すための武器として扱う場所にもなった。

ヴェネツィア事件後、ゲンジは正規のオーバーウォッチで訓練を続けることになる。その後も任務で成果を上げたが、組織崩壊後には自分の体と過去への葛藤から放浪の道を選んだ。
ブラックウォッチでの経験が、ゲンジの苦しみをどの程度深めたかは明言されていない。ただ、ゼニヤッタの公式ストーリーでは、ゲンジが兄との決闘、ブラックウォッチでの疑わしい任務、オーバーウォッチ崩壊によって負った傷から癒やしを求めたと説明されている。
モイラにとってのブラックウォッチ
モイラにとって、ブラックウォッチは失った研究環境を取り戻せる場所だった。
倫理審査や科学界からの批判を避けながら、遺伝子研究を続けられる。組織側も、通常の研究機関では扱いにくい技術を手に入れられる。両者の利害は一致していた。
しかし、秘密の環境はモイラの研究を安全に管理したのではなく、外部の監視から遠ざけた。
彼女がレイエスへ与えた処置は、後に彼の細胞を急速に崩壊・再生させる能力へつながっていく。スイス本部爆発後には、瀕死のレイエスへさらに強い処置を行い、現在のリーパーを作る重要な要因となった。

ヴェネツィア事件だけでオーバーウォッチは崩壊していない
ヴェネツィア事件は大きな転機だが、これだけでオーバーウォッチが即座に解散したわけではない。
組織はその後も活動を続け、ゲンジ、トレーサー、ウィンストンらはハバナでドゥームフィストの逮捕に成功している。
一方で、ブラックウォッチの活動が露見したことで、それまで英雄組織の裏側に隠れていた暗殺、強制、主権侵害への疑いが表へ出た。各国政府と世論からの圧力は強まり、内部ではレイエスとモリソンの対立が深まっていく。
最終的にスイス本部で二人の争いが起き、大規模な爆発によって本部が崩壊した。国連はオーバーウォッチを解散させ、活動を禁じるペトラス法が成立する。
したがって、ヴェネツィア事件は「オーバーウォッチを一日で壊した事件」ではない。
組織が目的のために隠してきた手段を世界へ露出させ、その後に起きる問題を、単なる噂では済ませられなくした事件だった。
ブラックウォッチの責任は誰にあったのか
ヴェネツィアでアントニオを殺したのはレイエスであり、その判断の責任は彼にある。
しかし、ブラックウォッチ全体をレイエス一人の暴走として片づけると、オーバーウォッチ本体が秘密部隊を必要とし、その成果を利用していた事実が見えなくなる。
正規の手続きでは止められない脅威へ対処するため、組織はブラックウォッチへ権限を渡した。その一方で、問題が起きたときに誰が判断を監督し、誰が責任を負うのかを明確にできなかった。
アナやマーシーのように、オーバーウォッチ内部から組織の方向性へ疑問を持つ者もいた。特にマーシーは、レイエスとモイラの関係を含むブラックウォッチの活動を危険視していた。
ブラックウォッチの失敗は、秘密任務を行ったことだけではない。守るべき基準を秘密の中でも維持する仕組みを持てなかったことにある。
ヴェネツィア事件は現在のタロンにも続いている
アントニオの死は、タロン内部にも大きな空白を残した。
彼の娘マルツィアは父の帝国と継承権を失い、復讐者「ヴェンデッタ」として力を蓄えた。現在、彼女はドゥームフィストを倒して新生タロンを率い、ブラックウォッチとレイエスへの復讐を自分の物語の中心に置いている。
一方、レイエスはリーパーとしてタロンへ加わったが、ヴェンデッタが支配権を握ると姿を消した。彼女の父を殺した責任から逃れられないためである。
新生タロンの現在については、ヴェンデッタとタロンの解説で詳しく整理している。
公式に確定していることと、まだ分からないこと
公式に確定しているのは、ローマ襲撃への報復としてブラックウォッチがアントニオを追ったこと、レイエスが彼を殺したこと、事件後に部隊の存在とモイラの所属が露見したこと、そしてブラックウォッチが活動停止になったことだ。
一方、レイエスがいつからオーバーウォッチへ強い敵意を持っていたのか、ヴェネツィアで最初から殺害を考えていたのか、モリソンを含む上層部がモイラの研究をどこまで把握していたのかは、完全には明らかになっていない。
また、オーバーウォッチ崩壊には内部対立だけでなく、外部からの工作や陰謀が関わった可能性も示されている。しかし全体像はまだ公式に確定していない。
世界全体の流れは、オーバーウォッチの物語を時系列で解説した記事でも確認できる。
ブラックウォッチはオーバーウォッチの矛盾を映した組織
ブラックウォッチは、オーバーウォッチと正反対の悪の組織ではなかった。
人々を守るという同じ目的のために、表では認められない手段を引き受けた、もう一つのオーバーウォッチだった。
だからこそ、その失敗は深刻だった。正義を掲げる組織が、正しい結果を急ぐあまり、自分たちが守るはずの手続きと責任を秘密の中へ追いやった。
ヴェネツィア事件で撃たれた一発は、ブラックウォッチの存在を世界へ知らせただけではない。オーバーウォッチが抱えていた矛盾を、もう隠せない形で表へ出したのである。
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この記事の執筆
Overwatchプレイ歴4年。本サイトの企画、診断ロジック実装、記事執筆、サイト運営を担当しています。