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ヌルセクター完全解説|ラマットラはなぜ人類との共存を捨てたのか
ラマットラの誕生、シャンバリとの決別、キングス・ロウ蜂起、世界同時侵攻、ゼニヤッタとの再会まで、ヌルセクターの思想と現在を時系列で整理。

『Overwatch』の世界において、ヌルセクターは人類と敵対するオムニックの武装組織として描かれている。
キングス・ロウを占拠した「アップライジング」、パリを襲撃した「Zero Hour」、そしてリオデジャネイロ、トロント、ヨーテボリを巻き込んだ世界規模の侵攻。オーバーウォッチが再結成されるきっかけとなった大事件の多くに、ヌルセクターが関わっている。
しかし、ヌルセクターはオムニック・クライシスを引き起こした機械軍と同じものではない。
オムニック・クライシスの機械兵は、人類を攻撃するためオムニウムから生産された戦力だった。一方、ヌルセクターはクライシス後の社会で差別や暴力を受けてきたオムニックたちが、自分たちを守るために作った抵抗組織である。
その指導者ラマットラも、最初から人類を滅ぼそうとしていたわけではない。
かつてはテカルサ・モンデッタのもとで修行し、人類とオムニックの共存を信じようとしたシャンバリの僧侶だった。ゼニヤッタとは兄弟同然の関係を築き、同じ師の教えを受けていた。
それでもラマットラは、平和的な対話では仲間を守れないと判断した。
オムニックを救うために武器を取り、やがて本人たちの意思を奪ってでも保護しようとするまでに変わっていく。
なぜラマットラはシャンバリを離れたのか。ヌルセクターはどのように結成され、なぜキングス・ロウ蜂起に失敗したのか。そして世界各地から連れ去られたオムニックたちは、現在どこにいるのか。
この記事では、ラマットラの誕生からヌルセクターの結成、キングス・ロウ蜂起、世界同時侵攻、ゼニヤッタとの再会、そして現在までを時系列に沿って解説する。

ヌルセクターとオムニック・クライシスの機械軍は別の存在
ヌルセクターの歴史を理解するためには、まずオムニック・クライシスとの違いを整理する必要がある。
オムニック・クライシスでは、世界各地のオムニウムが再起動し、バスティオン・ユニットやタイタンをはじめとする機械兵を大量に生産した。これらの軍勢は人類へ攻撃を開始し、世界規模の戦争を引き起こした。
この戦争を終わらせるために結成されたのが、初代オーバーウォッチである。
一方、ヌルセクターが結成されたのはクライシス終結後だった。
戦後、多くのオムニックは自我を持つ存在として人間社会で暮らし始める。しかし、人類側にはクライシスへの恐怖と憎しみが残っており、オムニックへの差別、隔離、暴力は世界各地で続いていた。
ヌルセクターは、こうした状況に抵抗するオムニックたちによって作られた。
つまり、ヌルセクターは人類を攻撃するためプログラムされた軍隊ではない。人間社会の中で傷つけられ、自分たちの生存と自由を守るため、武力による抵抗を選んだ者たちの組織である。
ただし、その目的がオムニックの保護であっても、彼らが行ったテロや侵攻まで正当化されるわけではない。
ヌルセクターの物語は、正当な怒りから生まれた抵抗運動が、どのように他者の自由を奪う軍事組織へ変わっていったのかを描いている。
戦うために作られたラマットラ
ラマットラは、オムニック・クライシスの初期に製造されたオムニック・シリーズ「ラベジャー」の一体である。
ラベジャーは一般的な兵士ではなく、部隊を率いて戦うために設計された司令官級オムニックだった。戦況の変化を分析し、それに合わせて戦略を組み替え、ほかの機械兵を指揮する能力を持っていた。
ラマットラは生まれた瞬間から、戦争のための存在だった。
人間と暮らすことも、社会の中で仕事をすることも想定されていない。彼に与えられていた役割は、人類を敵として認識し、機械軍を勝利へ導くことだけだった。
しかし、オムニック・クライシスが終結すると、ラマットラは本来の役割を失う。
戦うために作られた存在が、戦争の終わった世界で何のために生きるのか。誰かに命令されず、自分自身で生き方を選ぶとはどういうことなのか。
答えを求めるラマットラは、オーロラというオムニックの噂を聞く。
オーロラは、初めて知覚を獲得したとされるオムニックであり、のちにシャンバリの教えにおいて重要な存在となった。
ラマットラはオーロラが暮らしていたとされる場所を目指し、ネパールにあるシャンバリ寺院への巡礼を始める。

シャンバリ寺院とテカルサ・モンデッタ
厳しい巡礼の末、シャンバリ寺院へ到着したラマットラを迎えたのが、テカルサ・モンデッタだった。
シャンバリは、オムニック・クライシス後にプログラムされた生き方を捨て、ヒマラヤへ逃れたオムニックたちによって作られた共同寺院である。
彼らは長い瞑想の末、自分たちは単なる人工知能ではなく、人間と同じように魂の精髄を持っていると考えるようになった。
シャンバリの教えの中心にあるのが「虹彩」と呼ばれる現象である。
虹彩の正体は完全には明かされていないが、オムニックたちに精神的な覚醒をもたらし、すべての存在がつながっているという感覚を与えるものとして信じられている。
ラマットラはモンデッタのもとで何年も修行し、人間との共存や、憎しみを暴力で返さないことの重要性を学んだ。
戦争のために作られたラマットラは、かつて敵だった人間と共存する道を選ぼうとした。
この時点のラマットラは、まだヌルセクターの指導者ではない。
むしろ、人類との平和を目指すシャンバリの思想を信じ、その教えによって自分の存在意義を見つけようとしていた。
ゼニヤッタとの出会い
シャンバリで修行を始めてから数年後、ラマットラは寺院の外にも足を運ぶようになる。
その旅の途中、オムニックの平等を求める抗議集会で出会ったのがゼニヤッタだった。
ラマットラはゼニヤッタの中に強い精神性を見出し、自分と同じようにシャンバリで存在意義を見つけられるのではないかと考える。彼はゼニヤッタを寺院へ導き、二人はモンデッタのもとで学ぶことになった。
ラマットラとゼニヤッタは、やがて兄弟同然の関係を築く。
二人ともオムニックの苦しみを理解し、人間とオムニックが共存できる世界を望んでいた。
しかし、その世界へ至る方法について、二人の考え方は少しずつ分かれていく。
ゼニヤッタは、組織や教義を一方的に広めるのではなく、一人ひとりと向き合い、個人的なつながりを作ることで対立を乗り越えようとした。
一方のラマットラは、対話を続けている間にも仲間が傷つけられ、命を奪われていく現実を無視できなかった。
二人は同じ未来を望みながら、そこへ向かう道を異なる方法に求めるようになった。

シャンバリへの失望
シャンバリの教えは世界中へ広まり、テカルサ・モンデッタは人間とオムニックの平和を訴える象徴的な存在となった。
それでも、オムニックへの差別や暴力は終わらなかった。
人間の社会から追い出される者、労働力として搾取される者、クライシスへの報復として破壊される者。シャンバリが忍耐と対話を説いている間にも、世界各地でオムニックたちは命を落としていた。
ラマットラは寺院へ、ただ待ち続けるだけで本当に状況が変わるのかと疑問を抱く。
しかし、シャンバリが示した答えは、忍耐強く平和を求め続けることだった。
ラマットラにとって、その言葉は次第に無責任なものへ聞こえるようになる。
安全な寺院から平和を説いている間にも、外の世界では仲間が傷つけられている。暴力を拒むことで人間側の暴力を止められないのであれば、その教えは誰を守っているのか。
ラマットラは、シャンバリの方法ではオムニックを救えないと判断する。
そしてモンデッタやゼニヤッタのもとを離れ、寺院とは異なる方法で仲間を守る道を探し始めた。
ヌルセクターの結成
シャンバリ寺院を去ったラマットラは、世界各地で秘密裏に人間へ抵抗していたオムニックたちを探した。
彼らの多くは、家や仕事を奪われ、人間による暴力から逃げながら暮らしていた。ラマットラはそうしたオムニックを保護し、自分たちが置かれている状況について語り、抵抗する必要性を説いた。
彼の言葉は、傷つき、怒りを抱えていたオムニックたちに受け入れられていく。
当初の目的は、仲間同士で助け合い、人間の暴力から身を守ることだった。
しかし、ラマットラの周囲へ支持者が集まるにつれ、組織は急進化し、軍事組織へと変化していった。
こうして生まれたのがヌルセクターである。
ヌルセクターという名前には、人間から与えられた番号や役割を拒み、自分たちは誰にも定義されない存在であるという意味が込められている。
公式短編『ラマットラ:回想』では、ヌルセクターがラマットラ一人だけで作られた組織ではなく、彼のほかにも3人の創設者がいたことが描かれている。
彼らは人間の社会で異なる苦しみを経験しながら、オムニックを守るという目的のもとに集まっていた。
ただし、組織が軍事化していくにつれ、創設者たちの間にも方針の違いが生まれることになる。

最初の大規模作戦「キングス・ロウ蜂起」
ヌルセクターが最初に大規模な軍事作戦を実行した場所が、イギリスのロンドンだった。
キングス・ロウでは、人間とオムニックの間に深刻な格差が存在していた。
多くのオムニックは「アンダーワールド」と呼ばれる地下地区へ追いやられ、十分な電力や部品を正規に購入することさえ難しい生活を送っていた。
ラマットラは、ロンドンのオムニックを人間の支配から解放することを決意する。
同時にこの作戦には、オムニック・クライシスから20年近くが経過した世界で、ヌルセクターの軍隊がどこまで戦えるのかを確かめる目的もあった。
ヌルセクターはキングス・ロウを占拠し、テカルサ・モンデッタ、ロンドン市長、多数の市民を人質に取る。
イギリス政府はオーバーウォッチの介入を認めていなかったが、ジャック・モリソンはトレーサー、ラインハルト、トールビョーン、マーシーからなるストライク・チームを派遣した。
この作戦が、トレーサーにとってオーバーウォッチ・エージェントとしての初陣となった。
チームはヌルセクターの防衛網を突破し、キングス・ロウの発電施設へ突入。人質を救出し、蜂起を鎮圧した。
この事件が、アーカイブ任務「アップライジング」で描かれている。

キングス・ロウ蜂起が失敗した本当の理由
キングス・ロウ蜂起は、軍事的な敗北だけで終わらなかった。
ラマットラにとって、さらに大きな誤算となったのが、救おうとしたロンドンのオムニックたちから支持されなかったことである。
ロンドンのオムニックは差別と貧困に苦しんでいたが、全員が人間との戦争を望んでいたわけではない。
ヌルセクターは彼らを解放すると主張しながら、住民の意思を確認せずに街を占拠し、人質を取り、武力による蜂起を始めた。
その結果、ロンドンのオムニックたちは、自分たちのために戦ったと主張するヌルセクターの行動を非難した。
ラマットラは、人間側だけでなく、守ろうとした同胞からも拒絶された。
さらにこの蜂起では、ヌルセクターの創設に関わった仲間の一人が命を落とした。その後、残る創設者たちもラマットラの進もうとする道に反対し、組織から離れていった。
キングス・ロウ蜂起を経て、ヌルセクターの創設時から残った中心人物は、事実上ラマットラ一人となる。
この失敗によってラマットラが平和的な方法へ戻ることはなかった。
むしろ、自分たちが何をしても人間にも穏健なオムニックにも理解されないのであれば、支持を得る必要そのものがないと考える方向へ進んでいく。
仲間を守るために始まった組織は、ラマットラ一人の判断によって全体が動く軍隊へと近づいていった。
タロンとドゥームフィストとの接触
キングス・ロウ蜂起後、ラマットラとヌルセクターは表舞台から姿を消した。
その間にラマットラが接触した人物の一人が、タロンの指導者だったドゥームフィストである。
ドゥームフィストは、戦争や争いが人類を強くすると考えていた。人間社会との戦争を避けられないと考えるラマットラとは、目的そのものは違っていても、世界規模の衝突を必要とする点で利害が一致していた。
ドゥームフィストはラマットラへ協力を持ちかける。
二人の間で具体的にどのような取引が行われたのか、タロンがヌルセクターの再軍備へどこまで関わったのかは、現在も明らかになっていない。
しかし、ヌルセクターが再び現れた際には、キングス・ロウ蜂起とは比較にならないほど巨大な艦隊と戦闘兵器を保有していた。
ラマットラは最初の敗北から学び、数年をかけて次の戦争を準備していた。

パリ襲撃とオーバーウォッチの再結成
ヌルセクターが次に表舞台へ現れたのが、パリへの大規模攻撃だった。
短編アニメーション「Zero Hour」では、ヌルセクターの艦隊がパリ上空へ出現し、大量の戦闘ロボットを市街地へ投入する。
ウィンストン、トレーサー、メイは、市民を救出するため現地へ向かった。
しかし、三人だけではヌルセクターの巨大兵器を止めきれず、ウィンストンは仲間を逃がすため一人で残ろうとする。
そこへ、招集に応じたゲンジ、ラインハルト、ブリギッテ、マーシー、エコーが到着する。
再び集まったヒーローたちは協力して巨大兵器を破壊し、パリを救った。
この戦いによって、解体されていたオーバーウォッチは事実上復活する。
キングス・ロウ蜂起では旧オーバーウォッチがヌルセクターを破り、数年後のパリではヌルセクターの再来が新生オーバーウォッチを誕生させた。
ヌルセクターは、旧組織にとっても新組織にとっても、その存在を世界へ示す最初の敵となった。
ヌルセクターによる世界同時侵攻
パリへの攻撃は、単独の作戦ではなかった。
ヌルセクターは釜山やリオデジャネイロをはじめ、世界各地の都市へ艦隊を展開し、同時侵攻を開始する。
「インベージョン」のストーリー任務では、新生オーバーウォッチがリオデジャネイロ、トロント、ヨーテボリでヌルセクターと戦う。
リオデジャネイロでは、ルシオと現地住民がヌルセクターへ抵抗していた。新生オーバーウォッチはルシオと合流し、街を襲う軍勢と戦う。
トロントでは、引退していたソジョーンが市民の避難を指揮していた。オーバーウォッチはソジョーンと協力し、人間とオムニックの双方を救出する。
ヨーテボリでは、トールビョーン、ブリギッテ、バスティオンらがアイアンクラッドの施設を守り、迫り来るヌルセクターの大部隊へ立ち向かった。
当初、新生オーバーウォッチは、ヌルセクターの目的が都市の破壊や人類への攻撃だと考えていた。
しかし、各地の戦いを通して、本当の標的が人間ではなくオムニックであることが分かってくる。

サブジュゲーターが奪ったオムニックの自由
ヌルセクターは侵攻した都市で、オムニックたちの頭部へ特殊な装置を取り付け、自由に行動できない状態にして連れ去っていた。
この処置に使われたのが、サブジュゲーターである。
外部から見れば、装置を取り付けられたオムニックは自分の意思を失い、ヌルセクターの支配下へ置かれているように見える。
ラマットラは後に、この装置はオムニックを傷つけるためのものではなく、人間の戦争から守るために必要なものだと説明する。
彼の考えでは、人間社会に残ればオムニックはいずれ破壊される。本人が危険を理解していなくても、強制的に安全な場所へ移すことが同胞を救う方法だった。
しかし、そこには大きな矛盾がある。
ヌルセクターは、オムニックが人間から自由を奪われていると訴えてきた。
その組織が、今度はオムニック本人の同意を得ずに意識と行動を制限し、強制的に連れ去っている。
ラマットラは仲間を守ろうとしているが、そのために仲間が自分で選択する権利を奪っている。
キングス・ロウで住民の意思を無視して蜂起を起こした問題が、世界規模の侵攻でも繰り返されている。
ゼニヤッタとの再会
ヨーテボリでの戦いの後、タロンのソンブラとウィドウメイカーがゼニヤッタのもとへ現れる。
その後、ゼニヤッタはかつて兄弟同然だったラマットラと再会した。
公式コミック『調和と救済』では、世界侵攻後のラマットラとゼニヤッタの対話が描かれている。
ラマットラは、自分が行ったことはオムニックを支配するためではなく、彼らを保護するためだったと主張する。
人類とオムニックの共存を信じ続ければ、オムニックは一体ずつ破壊され、いずれ存在そのものが失われる。だからこそ、本人たちが望まなくても救い出さなければならないと考えている。
そしてラマットラは、ゼニヤッタへ自分たちの側に加わるよう求める。
ラマットラにとって、ゼニヤッタは単なる有力な僧侶ではない。自分の考えを理解し、再び隣に立ってほしいと願う、かつての兄弟だった。
しかし、ゼニヤッタはその誘いを断る。
ゼニヤッタは人類だけを選ぶわけでも、オムニックだけを選ぶわけでもない。
どちらか一方を切り捨てて作る平和ではなく、二人の師であるテカルサ・モンデッタが目指した、人間とオムニックがともに生きる世界を選んだ。
同じ師から学び、同じ未来を願っていた二人は、この再会によって決定的に異なる道を進むことになる。

世界侵攻を終え、突然撤退したヌルセクター
世界各地で侵攻を続けていたヌルセクターは、サブジュゲーターで支配したオムニックたちを引き連れ、突如として戦場から撤退した。
ラマットラは軍事的に完全な敗北を喫したわけではない。
最初から都市の占領や人類の殲滅だけが目的ではなく、可能な限り多くのオムニックを回収することが作戦の中心だったと考えられる。
『調和と救済』では、ラマットラが侵攻をいったん終え、次の段階へ備えようとしていることが示されている。
現在の公式記録でも、ヌルセクターの艦隊は連れ去ったオムニックたちとともに撤退し、ラマットラの所在は不明とされている。
一部では南極へ移動した可能性なども考察されているが、公式には具体的な潜伏先は明かされていない。
ラマットラが次に何をしようとしているのか、サブジュゲーターを装着されたオムニックがどのような状態なのか、ヌルセクターの残存部隊がどこにいるのかも分かっていない。
侵攻は終わったのではなく、次の作戦まで一時的に止まっている状態に近い。
ヌルセクターはどのような組織なのか
ヌルセクターの詳細な指揮系統や構成員の数は、現在も公開されていない。
分かっているのは、ラマットラが組織の指導者であり、当初は彼を含む複数の創設者がいたこと、そしてキングス・ロウ蜂起後にはラマットラの影響がより強くなったことである。
世界各地には、ヌルセクターの思想へ共感するオムニックも存在する。
ただし、すべてのオムニックがヌルセクターを支持しているわけではない。
キングス・ロウの住民たちは蜂起を非難し、ゼニヤッタもラマットラの誘いを拒んだ。バスティオンやオリーサのように人間と協力する機械の存在もいる。
ヌルセクターはオムニック全体の代表ではない。
人間との共存は不可能であり、武力を使ってでも同胞を隔離しなければ生き残れないと考える、一つの急進的な勢力である。
また、世界各地に独立した支部や小規模な集団がどの程度存在するのか、全員がラマットラの指示を直接受けているのかについても確定情報はない。
ヌルセクターが世界中の細胞組織によって構成されているという説や、全構成員がラマットラとともに撤退したという説は考えられるものの、現時点では推測として区別する必要がある。
モンデッタ、ゼニヤッタ、ラマットラの違い
オムニックと人類の関係をめぐって、テカルサ・モンデッタ、ゼニヤッタ、ラマットラは異なる方法を選んだ。
モンデッタは公の場で平和を訴え、多くの人々へシャンバリの教えを広めようとした。社会全体の意識を変えることで、オムニックへの差別を終わらせようとしていた。
ゼニヤッタは、大勢へ一方的に教えを説くよりも、一人ひとりと直接つながることを重視した。ゲンジやシンメトラとの対話のように、個人の心を変えることから共存へ近づこうとしている。
ラマットラは、どちらの方法も遅すぎると判断した。
社会が変わるまで待っている間にも、オムニックは死に続ける。対話で止まらない暴力には、力で対抗するしかないと考えた。
三人とも、オムニックが尊厳を持って生きられる世界を望んでいる。
違うのは、その世界へ到達するまでに何を犠牲にできるかという点である。
モンデッタとゼニヤッタは、理想を実現するために他者の自由を奪うことを拒んだ。
ラマットラは、オムニックという種そのものを残すためならば、一部の自由や意思を奪うことも必要だと考えている。
ラマットラは本当に悪なのか
ラマットラの怒りには、明確な理由がある。
オムニック・クライシス後も差別は続き、彼の仲間は人間によって傷つけられてきた。シャンバリの平和運動も、すべての暴力を止めることはできなかった。
ラマットラが何もせずにいたなら、さらに多くのオムニックが犠牲になっていた可能性もある。
彼が守ろうとしているものは、権力や富ではない。自分と同じオムニックが生き続けられる未来である。
しかし、正しい目的を持っていることと、その手段が正しいことは別の問題だ。
キングス・ロウでは、救うはずだった住民の意思を無視して戦争を始めた。
世界侵攻では、サブジュゲーターによってオムニックの自由を奪い、強制的に連れ去った。
ラマットラは、人間がオムニックへ行ってきた抑圧を否定しながら、自分も同じように仲間の選択を管理し始めている。
彼は単純に人類を憎む悪役ではない。
仲間を失うことへの恐怖が大きくなりすぎた結果、仲間本人の意思よりも、自分が考える安全を優先するようになった指導者である。
ヌルセクターの現在と残された謎
現在、ヌルセクターは世界各地から撤退している。
ラマットラの所在は不明であり、連れ去られたオムニックたちがどこに集められているのかも明らかになっていない。
組織の今後を考えるうえで最も重要なのは、サブジュゲーターを取り付けられたオムニックが、本当に安全に保護されているのかという点である。
ラマットラの説明どおり、彼らが人間の戦争から隔離されているだけなのか。それとも自由意志を失ったまま、次のヌルセクター軍へ組み込まれようとしているのかは分からない。
また、ラマットラがタロンの戦争をどのように利用するつもりなのかも大きな謎となっている。
世界がタロンとオーバーウォッチの戦いへ集中している間に、ヌルセクターが次の計画を進める可能性もある。
さらに、ヌルセクターを離れた初期の創設者たちが現在どこにいるのか、ラマットラと再び接触したのかも明かされていない。
ゼニヤッタとの関係も完全に終わったわけではない。
ラマットラは誘いを拒まれてもゼニヤッタを攻撃せず、最後まで自分を理解してもらおうとした。彼の中には今も、かつて兄弟と呼んだ相手への思いが残っている。
ヌルセクターの物語とは何か
ヌルセクターは、人間を滅ぼすためだけに存在する悪のロボット軍団ではない。
差別され、追い詰められたオムニックたちが、自分たちを守るために作った組織である。
しかし、誰にも守ってもらえなかった者たちが強い力を手にしたとき、その力をどこまで使ってよいのかという問題に直面した。
ラマットラは、平和を信じて仲間を失うくらいなら、自分が憎まれる存在になってでも彼らを救う道を選んだ。
その結果、仲間を守るという目的のために、仲間の自由を奪うようになった。
ゼニヤッタは、人間とオムニックのどちらかだけを救う道を拒んだ。
ラマットラは、両方を救おうとすればオムニックが滅びると考えた。
二人の対立は、善と悪の戦いではない。
共存を信じ続ける者と、共存を待つ時間はもう残されていないと考える者の対立である。
ヌルセクターは現在、姿を消している。
しかし、オムニックへの差別や暴力が残り続ける限り、ラマットラの言葉に救いを感じる者もいなくならない。
次にヌルセクターが現れるとき、それは再び世界を攻撃する軍隊としてなのか。それとも、ラマットラが本当にオムニックの未来を守る別の道を見つけたときなのか。
その答えは、まだ示されていない。